アナスイ長財布新作
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null「何するのよ!」ふり向くと、母親の両眼が、上から見えない糸で吊《つ》りあげたように尖《とが》っていた。次の瞬間には頬《ほ》っぺたにひどい打撃を感じてふらふらした。小田切先生に負けないくらい、力のこもった一撃であった。「あなたの体の全部は、お父さんとお母さんが作ってあげたのよ。一人で勝手なことしないで!」  痛さのあまり涙をこぼしながら、佐智は彼女にも自分にも関係のないことをくり返していた。 〈趙さん逃げろ、趙さん逃げろ〉  ごろごろの岩山を、腹から血を流しながらのぼっていく趙文成の背広姿があった。彼と手をつないだ愛人は、ヒマワリの花のような黄色い晴着を着て、紺色のジャケツを羽織っていた。彼らは山の向側に、緑の毛皮を敷きつめたように広がる趙文成の故郷へ急いでいた。趙文成と愛人がそこに行きつけるかどうか、佐智にはわからなかった。  美しい町は、彼らのずっと背後にあった。  この会話を交わしたのは四日前だった。それなのに佐智は船の影さえもまだ見てはいない。ただ白いカモメが上昇気流に乗って倉庫の屋根をふわりと飛び越えたり、風がときどき潮の香を運んでくるので、港の存在を信じただけだ。佐智はそのあいだずっと、収容所に指定された穀物倉庫の中で、母親や知らない日本人と暮らしていた。倉庫の床には黄色や白い粉がこぼれていた。黄色いのはとうもろこしの粉で、白いのは殺虫剤だった。日本人が足を引きずって集結地に到着すると、待ちかまえていたアメリカの兵隊が頭上に白い粉をふりまきはじめた。皆|咳《せき》こんだり、目から涙をこぼしたりしたが、マスクで顔半分をおおったアメリカ兵は犬に蚤取粉《のみとりこ》をまぶすように遠慮なく、衿首《えりくび》や袖口《そでぐち》にまで散粉器の先を突っこんだ。ここまで佐智たちを運んできた中国兵は、その様子を薄ら笑いしながら眺めていた。日本人の体じゅうが清潔になると、アメリカ兵は「ハリ アプ、ジャップ」と言って、一人ずつ背中をたたいて倉庫に押しこんだ。佐智の番になったとき思わず尻《しり》ごみすると、彼は底ぬけに明るい瞳《ひとみ》で彼女をにらみつけ「ユー ストゥピッド ガール!」と言った。彼はろうそくみたいに背が高く、きっとこんな役目よりは戦車に乗りたいと思っていたのにちがいない。  だから床の上を歩くたびに、過剰に毛穴にたまった殺虫剤がふけのように落ちるのは当然だった。皆、四日間を白い粉と黄色い粉が混じりあって舞いたつ倉庫で暮らしていたが、だれも文句は言わなかった。なぜならこれが、収容所であったからだ。  中国側もアメリカ側も何一つ説明しなかったけれど、なぜ出港できないのか佐智にもわかった。父親たちの音沙汰《おとさた》が全然なかったのである。病院で診察を受けたのち病人たちは三|棟《むね》の倉庫の端にある鉄製のテント形の建物に入れられていた。隔離|病棟《びようとう》のまわりには人の二倍の高さの鉄条網が張りめぐらされ、全身で出ている所は目だけという出立《いでた》ちの看護人がときどき鍵《かぎ》をあけて出入りしていた。病人たちは一人も倉庫の家族のもとに戻ってこないばかりか、夜半に腹痛でうめき声をたててもたちまち隔離病棟に連れていかれるのだった。佐智の母親は娘と二人になってから、すっかりめいってしまっていた。彼女は終日むしろに座りこんで、ぼんやりと通路の方角を見ていた。日本人の男が入ってくるたびに、目が一瞬輝くのだが、すぐにまたふさぎこんだ。 「アメさんは腸チフスをとても怖がりますねん」隣のむしろの老夫婦の夫のほうが、気の毒そうに佐智の母親に言った。「自分らは高等動物やから、かかったらすぐにでも死ぬように思うとるんでしょう」  彼は佐智の住んでいた町で、薬屋を八年開いていたとつけくわえた。  その代り、一般の収容所の監視はほとんどないも同然だった。朝と晩に中国の兵隊がのんびりした足どりで敷地を一巡し、ついでに倉庫の内部をのぞきこむだけだった。申しわけに敷地の周囲にはられた銅線の隙間《すきま》は、佐智やほかの子供が十分くぐりぬけられるほど広かった。しかしだれも収容所の外に出る気持にはなれなかった。海の方角には不気味なわなが待ち受けているような気がしたし、町の方角には鼻をつまみたくなる貧しさがあった。それよりももう少しの辛抱で船に乗れる……その期待はほかのすべての好奇心を打ち消した。  道路をはさんで、やはりテント形のアメリカ兵の宿舎と物置きみたいな中国兵の宿舎が並んでいた。彼らはお互いに境界をよく心得ているようで、談笑することもなかったが、争いをする気配もなかった。そのいずれからもずっと離れて特別の宿舎があった。そこでは十数人の引揚者の家族が、佐智たちとは比べものにならない自由さで出航を待ちながら暮らしていたのである。長いスカートをはいた女たちは芝生に立てたポールに洗濯物《せんたくもの》をひるがえらせ、日本人と区別のつかない子供たちは集団で駆けまわっていた。どこから来たのか白い小犬までが、彼らの後を追いかけていた。佐智は落日の前後によく銅線のこちら側からその光景を眺めていた。過ぎたものの中で、もっとも好ましい思い出に近い雰囲気《ふんいき》がそこにあるような気がした。そこが特別区域で、佐智には手の届かぬ世界であっても、空想の中で彼女は彼らの仲間であった。  突然、小犬がこちらに向って走りだした。佐智は口笛を吹いた。犬はまだ敵も身方も見分けのつかぬ幼なさだった。足元に寄った犬を抱きあげると、生き物の臭《にお》いとともに粉ミルクの甘い香りが漂った。数人の子供たちが犬に続いて駆けてきたときも、彼女は無防備であった。むしろ彼らの交わしている意味不明の音声に聞き入っていたというほうが、本当であった。日本のそれよりも激しく上下するうねりに似た言語に、彼女は胸をつく懐《なつか》しさを感じていたのである。きっと自分はさぞだらしなく頬《ほお》をゆるめていたのだろう、とあとから想像して、佐智は唇《くちびる》を噛《か》んだ。近づいてきた一人の少年が、小犬が悲鳴をあげたほどの荒々しさで佐智の腕から引ったくったときにも、まだ彼女は気づかなかった。彼女は不意をくらって、収容所の敷地側に不様にも転倒したのである。 「何するのよう」  彼女は腹をたてながら、自分よりも年下に見える少年に向って言った。