ブライトリングスーパーオーシャンヘリテージ中古
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null わたしはまた妻のそばに帰って、医者の言い分を伝えました。 「どうする?」 「出血は、とまったみたいなの。」 「じゃ、このまま入院していて、産むようにするか。」 「そうしたいわ。」  と妻はいいました。それから、目を天井にむけて、しばらく真顔でじっとしていましたが、やがて、こういいました。 「あなた、大丈夫?」 「大丈夫さ、なんとかなるよ。」  妻は黙って天井をみつづけています。ふと、わたしは、妻があやぶんでいるのは出産費用や生活の問題ではなくて、わたし自身の心の行方だということに気がつきました。 「大丈夫だよ。」  わたしは、あらためていいました。 「そうね、大丈夫ね。」  妻は自分にいいきかせるようにそういうと、やっと和んだ目をわたしに戻《もど》しました。  わたしは、帰ることにして、妻が要るものを手帖《てちょう》に書きとめました。 「それに、できたら明日の朝、桃枝をつれてきて下さらない?」  妻は最後につけくわえました。 「ああ。つれてくるよ。」 「来年はお姉ちゃんだって、おしえてやるの。」