ルイヴィトンマルチモノグラム
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null パチンパチンと小気味の良い音が響く。  ムダのない手の動きと、真剣な横顔に見とれてしまう。ぴんと空気が張りつめる。  わずか十分ほどで、見事な生け花ができあがった。三百年続いた華道家元と学園新聞に書いてあったが、少しも古めかしくなく、若々しくて華やかな作品だ。  カラフルな花を色鮮やかに盛った大作で、どちらから見ても同じ形の、さわやかな作品にしあがっていた。  花を見ていると、気持ちがスッキリして、モヤモヤが消えていく気分になる。  この会社に勤める会社員たちも、花を見て気持ちがなごむことだろう。  すみれがふっと息を吐き、エプロンを取り去った。緊張がやわらかくほどける。 「うわぁ。綺麗だなぁ……なんか、モダンですねぇ。若宗匠の生け花っていうから、もっと堅苦しいのかって思ってた。生け花っていうより、フラワーアレンジメントっていうんですか? 西洋生け花って感じですねぇ。あの、名前を書いた板、置かないんですか? 町の文化祭だと、でっかいのが置いてありますよね」  すみれの身体が静電気に触れたようにふるえた。  柳眉が逆立ち、怖い表情になっているが、高志はまるで気付かない。 「ええ。主役はお花ですもの」  声がいちだん低くなり、すごみを増した。 『ねぇ、高志、大堀さん、怒ってない?』  姉が話しかけてきた。  ——えっ? そ、そうかな? 僕、なにか、マズイこと言ったかな。  すみれの顔をあらためて見るが、いつものお人形さんスマイルだ。  ——お姉ちゃんの錯覚だよ。  彼女はポケットから取り出した小さなボトルを傾けて、透明な液体を花瓶に入れた。ツンと来る匂いが立ちのぼる。