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2015-02-08 04:49    長財布
「さらば、聞いて戴きますかな。それがしが望みというは、せっかく人として生れ、人の生涯の終りにも近づきおれば、この期《ご》にあたって、人たるの道を踏み外《はず》したくない、という一義《いちぎ》に極まりまする。わが毛利家といえども、一天の下《もと》、蒼生《そうせい》の一藩、あなた方の御盟主たる右府様にも、禁門へたいし奉る臣情においては、優《まさ》るとも劣るものにはございませぬ。不肖《ふしよう》宗治は、その毛利家に属し、碌々為《ろくろくな》すなき身を、多年七千石の高禄《こうろく》をたまわり、一族みな恩養にあずかって、今日この変にあたり、国境の守りを命ぜられたこと、ひとえに主家の御信任によるところと、この日頃、生きがいありと、朝夕たのしく暮しておるところでござる。——さるをいま、小利に眼をくれて、羽柴どののお扱いをうけ、右府様の麾下《きか》に参って、二ヵ国の領主に坐ろうとも、所詮《しよせん》所詮、近頃のような心楽しき日が送れようとは思われぬ。ましてや、信義に背《そむ》き、主家を売り、何のかんばせあって、宗治、天下の士民に面《おもて》を向けられましょうか。……小さくは、それがしの家庭においても、妻にも子にも、甥《おい》にも姪《めい》にも、左様なことは、人の皮をかぶった者のすることと、日頃より教育もしておりますれば、自身で自身の家風をやぶる儀にも相成りまする。はははは、そんなわけですから、折角の御好誼《ごこうぎ》とはぞんずるが、おはなしの儀は、なかったものと、お忘れくださるように羽柴殿へも、よしなにお伝えたまわりたい。篤くお礼は申しあげる」 「……そうですか。むむ」  肚のそこから唸《うめ》くように頷《うなず》くと、官兵衛はすぐ明瞭にいった。 「もはやおすすめは仕《つかまつ》らぬ。彦右衛門殿、立ち帰るといたそう」 「ぜひもない」  彦右衛門は、自分たちの努力の至らなかったことを嘆息した。しかしその気持はここへ臨んでからのものである。清水長左衛門宗治は決して利にはうごくまいと観《み》ていたのは、ふたりとも前から予期していたことではあった。 「闇夜《あんや》は途中が危険。こよいは城内にお泊りあって、早朝にお帰りあってはいかが」  宗治はひきとめた。それも単なる世辞でなくうけとれた。実篤な人物かな。敵ながら正直にそう推服《すいふく》できる。 「いや、主人も返辞を待ちかねておりますれば」  と、使者たちは、松明《たいまつ》だけを乞いうけて帰途についた。宗治は、途中、間違いを生じてはならぬと、家臣三名を添えて、前線の境まで送らせた。 [#改ページ]   備中《びつちゆう》に入《い》る  往復とも、使者の一行は、眠らずに帰って来た。  岡山へ帰るとすぐ、官兵衛、彦右衛門のふたりは、秀吉のまえにあった。 「招降の儀は、不調に終りました。さすが宗治《むねはる》の決意は、固うござります。これ以上、いかにお手をくだいても、談合は無用と存ぜられます」