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nullエピローグ [#ここで字下げ終わり] [#改ページ]    プロローグ [#改ページ]  こいつはうそつきだ、と少年は心の中でつぶやいた。  しかし、その言葉を誰《だれ》にも伝えることはできない。自分の意志で唇《くちびる》や舌を動かすことはおろか、最近は目を開けていることすら難《むずか》しくなって来ていた。  膝《ひざ》や腰をできるだけ曲げないように設計された、特注の車椅子《くるまいす》に彼は乗せられている。携帯用の人工呼吸器のマスクが鼻のあたりを覆《おお》っていた。数ヶ月前から人工呼吸器の助けを借りなければ、息をすることもできない状態《じょうたい》だった。 「あなた方を心から歓迎しますよ」  と、「うそつき」は言った。車椅子の隣《となり》のソファに座っている彼の祖母《そぼ》は、その言葉にうっと声を上げてハンカチを目に押し当てた。少年は祖母に連れられて、その男の滞在するホテルの一室を訪れていた。 「世の中には真理に近い人間と、そうでない人間がいます。それがいつの時代でも人の世の本質です」 「うそつき」は細身の黒いスーツを身につけ、長髪を後ろで縛《しば》った四十代前半の男で、少年たちの向かい側にあるソファから身を乗り出すようにしていた。よく日焼けした顔には深い皺《しわ》が刻まれている。彼の傍《かたわ》らにはスーツと同じ色のマントとステッキが置いてある。見た目はまるで手品師だった。 (こいつはうそをつくのをたのしんでる)  と、少年は思う。時々、男の頬《ほお》がかすかにゆるむのが分かった。 (騙《だま》されている人を見るのがほんとに嬉《うれ》しいんだ) 「あなたはお孫《まご》さんを治療《ちりょう》するために、最善の努力を尽くされて来た。私にはそれが分かります。どんなに長く、苦しい旅路だったことか、それを本当の意味で理解できるのは私、この皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》だけです」  芝居《しばい》がかった男の言葉に、彼の祖母はぐすっと鼻をすすり上げた。天明と名乗った男は、少年ではなく彼の祖母だけに話しかけている。