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null 俺がそう答えると、男はぱちりと瞬きをした。それから、真っ白な歯を見せて人懐っこく笑う。 「だったらぼくと同じだ。少し早く着いたものだから、寺の中を一回りしていたんだ……ひょっとして、君は志田さんの本を捜している人?」 「そうです」  男はぎゅっと俺の手を握り、軽く上下に振った。状況が呑みこめずに、俺は男の手と顔を見比べた。 「ぼくは志田さんの友達で笠井《かさい》と言います。どういうわけか、彼からは『男爵』なんて変なあだ名で呼ばれてるけれど」  笠井は肩をすくめる。とにかく、絵に描いたような美青年だ。貴族の称号で呼びたくなる気持ちも分かる。  笠井は名刺を渡してくれたが、当然ながら俺は持っていない。仕方なくビブリア古書堂で働いている五浦です、と口で名乗った。 「ああ、あそこの古書店の人か。店の前を通りすぎたことはあるけど、中に入ったことはないな。君は店のオーナー?」 「いえ、ただの店員です。まだ働き始めたばっかりで」 「そうか、今度お邪魔させてもらうよ」  彼は歯切れよく言った。 「志田さんの知り合いとしか聞いていなかったから、てっきりぼくらと同業の人だと思いこんでいたんだ。平日の昼間に待ち合わせして悪かったね」  笠井は軽く頭をかく。まあ、かなり気障《きざ》ではあるが、悪い人間ではなさそうだ。  手元の名刺を見下ろすと、笠井|菊哉《きくや》という名前の上に「笠井堂《かさいどう》店主」と印刷されている。せどり屋だと聞いているが、店も持っているんだろうか。 「『笠井堂』というのはネットで使っている屋号だ。ぼくは仕入れを主にせどりでやって、ネットのオークションなんかでそれを売りさばいてる。志田さんとは少しやり方が違うんだ」  そういうせどり屋もいるのか、と俺は感心した。確かに他の店ではなく、直接客に売った方が話は早い。やっていることは普通の古書店とあまり変わらないんじゃないだろうか。 「まあ、ぼくは本のことはよく分からないから、廃盤CDやゲームを主に扱ってるんだけどね。志田さんとは互いに商品を融通し合ってるんだよ。扱ってるジャンルがバッティングしないし」