ルイヴィトン キーケース ヴェルニ
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null けれど、仕事などできる気分ではなかった。  これからどうしたらいいのだろう?  考えるのは、そのことばかりだった。  母親をなくした11歳の少女を、いつまでもひとりにしておくわけにはいかなかった。もちろん、僕がそんな心配をしなくても、周囲の大人たちが黙っているはずはなかった。  もし、今後も母親が帰宅しなければ(帰宅できるはずがないのだが)、おそらく、少女は石川県に住むという祖母の家に引き取られ、そこで暮らすことになるのだろう。あるいは別の親戚《しんせき》が彼女を引き取ることになるのかもしれない。いずれにしても、そうなったら、もう僕と会うことはなくなるだろう。  今後、どういうことになろうと、終わりの時が近づいていることは間違いなかった。  母親を殺して口封じをしたにもかかわらず、少女が僕の前から消えてしまうことになるのだったら……少女の母親を殺したことには何の意味もなかったということになる。  冷静に考えれば、そんなことは最初からわかっていたはずなのだ。僕がたとえ何を企《たくら》もうと、こんなことが続けられるはずはなかったのだ。  終わり。これで、終わり——。  その時が、もうすぐそこに迫っているのを、僕ははっきりと感じた。  西の空を朱に染めていた太陽が伊豆半島の向こうに沈み、夜の波間に地震観測用のブイが赤く点滅を始めた頃——部屋の片隅の電話がふいに鳴った。 『もしもし、先生……』  電話は僕の娘からだった。 「鈴木さん……どうしたの?」 『さっき、ママが働いてるお店のマネージャーから電話が来て……ママ、きょうも仕事に来てないんだって。携帯もずっと繋《つな》がらないし……どうしちゃったんだろう?』 「そうだね……どうしたんだろうね?」