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ビト ン+長 財布編集

 鹿取は野々山を見すえるようにして言った。野々山は曖昧な会釈を返した。   8 「厄介な仕事をきみに頼みたい」  鹿取はそう言って話を切り出した。 「ぼくにできる仕事でしょうか?」  野々山は言った。早く仕事の内容を知りたかった。 「たぶん、きみならやれる。厄介な上に外聞をはばかる仕事だがね」 「外聞をはばかる、といいますと?」 「ずばり言おう。何人かの人物にスキャンダルをプレゼントしてほしいのだ」 「スキャンダルをプレゼント……」  野々山はおどろいた顔になった。鹿取はみつめる野々山の視線をはね返すように見返してきた。 「目標は三人いる。一人はゼネラル通商社長の倉島輝信だ」 「社長のスキャンダルをでっちあげるんですか?」 「必ずしもでっちあげる必要はないかもしれない。人は誰しも他人に知られたくない事柄の一つや二つは隠し持っているもんだ。それを探り出すというのも、きみの仕事のうちだと思ってくれ」  鹿取の口調によどみはなかった。 「あと二人の目標は、ゼネラル通商専務の宮沢義也と内藤宗夫だ」
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